呼吸器外科専門医が考えるMR検査の近未来展望: The future is at hand: MRI examinations of lung and thoracic disease
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4. FDG陽性の多発リンパ節腫大を伴う肺がん症例の評価には、MRI(DWI)が有用である。(図16,17)

塵肺・珪肺の評価にMRI(DWI)は有用である。

塵肺・珪肺を合併した肺がん例の縦隔リンパ節は、PET-CTでは、多発性縦隔肺門リンパ節にFDGの集積が認められ、正確なリンパ節転移が不明のことが少なくありません(図16)。この場合でも、MRI(DWI)では、そのリンパ節には拡散能の低下はなく(描出されず)転移は否定されます。MRI(DWI)を用いることにより、PET-CTの炎症性FDG集積を、陰性と判断することができます。

 

Usuda K, et al.  Asian Pac. J. Cancer Prev. 16, 6401-6406, 2015.

5.  肺がんの経過観察における転移・再発病変におけるMRI(DWI)の有用性

転移・再発病変におけるMRI(DWI)では、再発転移病変の検出は容易で、ADCを測定することで、質的診断が可能である。

Usuda K, et al. Asian Pac J Cancer Prev. 15; 6843-6848, 2014.

6.  Diffusion-weighted whole-body imaging with background suppression (DWIBS: ドゥイブス法):背景抑制広範囲拡散強調画像(全身性拡散強調画像)

全身の病変を1回の検査で検索するDWIBSは、2004年に東海大学の高原太郎先生と今井裕教授らの研究グループが考案しました。PET-CTと、DWIBSはほぼ同じ成績で、DWIBSがPET-CTより上回るものもありますし、PET-CTがDWIBSを上回るものもあります。

PET-CTは、3割負担で約3万円とあまりにも高額なので、健康保険では、ものすごく特別なことでもないかぎり、1年に1度以上受けることはできません。また受けられたとしても、高負担です。しかしDWIBS(ドゥイブス法)は「造影をしない(単純の)MRI検査」です。このため、1〜3ヶ月間隔で健康保険を用いて行うこともできます。

PET-CTと比べたDWIBS検査の長所を列挙しました(図18)。また、DWIBSとPET-CTの比較を示しました(図19)。

アメリカの放射線学会誌の最も有名な雑誌の一つに「Radiology」があります。Mark L. Schiebler,M.D.が、RadiologyのEDITORIALとして報告した以下の論文に、私が2016年に報告した肺癌に対するwhole-body DW MRI(ドゥイブス法)が引用されています。今後whole-body DW MRI(DWIBS)が、肺がんの臨床病期診断でPET-CTと同等であることが証明されれば、PET-CTの費用を減らし、PET-CTに置き換わるであろう述べています。近い将来、whole-body DW MRI (DWIBS)だけが肺がんの新しい診断の利用されると予言しています。

Mark L. Schiebler,M.D.  Can solitary pulmonary nodules be accurately characterized with diffusion-weighted MRI?  Radiology 2019; 290:535–536 
(引用された英文) There is a single report by Usuda et al. that shows that DW MRI can be used to adequately stage NSCLC. In their study of 67 patients with NSCLC, PET/CT plus brain MRI showed a pathologic staging accuracy of 0.69, while in the same group, whole-body DW MRI had a pathologic staging accuracy of 0 .75. These data (8) clearly point to a need for an adequately powered prospective randomized trial to help definitively answer this question. Specifically, if whole-body DW MRI can be shown to have equipoise with 18F-FDG PET for the clinical staging of NSCLC, this would reduce the costs of patient work-up because 18F-FDG PET would no longer be needed. Perhaps in the near future, only whole-body DW MRI will be needed for clinical staging in patients with a new diagnosis of NSCLC.

(引用された論文) Usuda K, et al. Diagnostic Performance of Whole-Body Diffusion-Weighted Imaging Compared to PET-CT Plus Brain MRI in Staging Clinically Resectable Lung Cancer Asian Pac J Cancer Prev. 2016; 17: 2775-2780.

Usuda K, et al. Thoracic cancer 2021: 12 (5):676 – 684. 

7.  縦隔腫瘍の診断におけるMRIの有用性   (図20-22)

MRI検査では、縦隔病変の質的診断(良性か悪性か)が可能です。

Usuda K, et al, Asian Pac. J. Cancer Prev. 16, 6469-6475, 2015.

Gumustas S, et al. Eur Radiol. 2011: 21, 2255-60.

8.  悪性胸膜中皮腫を含めた胸膜病変の診断におけるMRIの有用性 (図23-27)

MR拡散強調画像では、病変の質的診断(良性か悪性か)が可能です。

 

Usuda K, et al. Cancers (Basel). 2019 Jun 12;11(6). pii: E811. doi: 10.3390/cancers11060811.

Pessôa, FM, et al. Lung 2016, 194, 501–509.

9.  肺がん切除縫合部分に発生した新出現の評価:切除縫合部肉芽腫(良性)か肺がん再発か? (図28-30)

MRI (DWI)で、切除縫合部に発生した病変の質的診断(良性か悪性か)が可能です。

Usuda K, et al. Transl Oncol. 2021;14(2): 100992.doi: 10.1016/j.tranon.2020.100992.

10. 肺がんの治療効果におけるMRIの有用性 (図31-32)

CTでは、治療効果を大きさで判断しますが、実際の病変の状態が不明な場合もあります。その場合でも、MRI(DWI)ではADCを用いて病変の質的診断が可能です。

Usuda K, et al. Transl Oncol. 2019;12(5):699-704.

Ciliberto M, et al. Radiol Oncol 47, 206–218.

ABOUT ME
薄田 勝男
呼吸器外科専門医として長年肺癌診療に携わってまいりました。 このサイトでは肺がん診断におけるMRIの有効性をご紹介しております。

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