14. DWIBS法(ドゥイブス法:Diffusion-weighted whole-body imaging with background suppression)とは?
全身のがん病変を、1回の検査で検索するMRI検査のDWIBS法(ドゥイブス法:Diffusion-weighted whole-body imaging with background suppression)が、2022/2/26 日本テレビ “世界一受けたい授業 !!” の番組の中で、‘日本のすごい医療 !!’ で紹介されました。PET-CTを凌駕するすごい検査です。食事を食べた後、DWIBS検査ができるのです。
DWIBS法は2004年に東海大学の高原太郎先生と今井裕教授らの研究グループが考案しました。PET-CTと、DWIBSはほぼ同じ成績で、DWIBSがPET-CTより上回るものもありますし、PET-CTがDWIBSを上回るものもあります。
PET-CTは、3割負担で約3万円とあまりにも高額なので、健康保険では、ものすごく特別なことでもないかぎり、1年に1度以上受けることはできません。また受けられたとしても、高負担です。しかしDWIBS(ドゥイブス法)は「造影をしない(単純の)MRI検査」です。このため、1〜3ヶ月間隔で健康保険を用いて行うこともできます。
PET-CTと比べたDWIBS検査の長所を列挙しました(図18)。また、DWIBSとPET-CTの比較を示しました(図19)。
アメリカの放射線学会誌の最も有名な雑誌の一つに「Radiology」があります。Mark L. Schiebler,M.D.が、RadiologyのEDITORIALとして報告した以下の論文に、私が2016年に報告した肺癌に対するwhole-body DW MRI(ドゥイブス法)が引用されています。今後DWIBS法が、肺がんの臨床病期診断でPET-CTと同等であることが証明されれば、PET-CTの費用を減らし、PET-CTに置き換わるであろう述べています。近い将来、whole-body DW MRI (DWIBS)だけが肺がんの新しい診断の利用されると予言しています。
Mark L. Schiebler,M.D. Can solitary pulmonary nodules be accurately characterized with diffusion-weighted MRI? Radiology 2019; 290:535–536
(引用された英文) There is a single report by Usuda et al. that shows that DW MRI can be used to adequately stage NSCLC. In their study of 67 patients with NSCLC, PET/CT plus brain MRI showed a pathologic staging accuracy of 0.69, while in the same group, whole-body DW MRI had a pathologic staging accuracy of 0 .75. These data (8) clearly point to a need for an adequately powered prospective randomized trial to help definitively answer this question. Specifically, if whole-body DW MRI can be shown to have equipoise with 18F-FDG PET for the clinical staging of NSCLC, this would reduce the costs of patient work-up because 18F-FDG PET would no longer be needed. Perhaps in the near future, only whole-body DW MRI will be needed for clinical staging in patients with a new diagnosis of NSCLC.
(引用された論文) Usuda K, et al. Diagnostic Performance of Whole-Body Diffusion-Weighted Imaging Compared to PET-CT Plus Brain MRI in Staging Clinically Resectable Lung Cancer Asian Pac J Cancer Prev. 2016; 17: 2775-2780.
15. 肺癌切除後のDWIBS検査 (Figure 62-66)
肺癌の転移再発の発見に、DWIBSは有用であり、安価であることを報告しています。
Usuda K, Iwai S, Yamagata A, Iijima1 Y, Motono N, Matoba M, Doai M, Yamada S, Ueda Y, Hirata K, Uramoto H. Diffusion‐weighted whole‐body imaging with background suppression (DWIBS) is effective and economical for detection of metastasis or recurrence of lung cancer. Thoracic cancer 2021:12 (5):676 – 684. doi:10.1111/1759-7714.13820.
要旨
背景:DWIBS法[Diffusion-weighted whole-body imaging with background suppression:背景抑制広範囲拡散強調画像(全身性拡散強調画像)]は、種々の癌の診断と病期決定に使用されています。日本でのDWIBS検査を含むMR検査の医療費は$123と、FDG-PET/CTの$798より80%も安価となっている。
方法:この研究では、肺癌切除例後の再発転移検出に対するDWIBS検査の有効性を後向きに検討した。術後6か月ごとにCT検査、術後1年ごとにDWIBSとFDG-PET/CTを行った肺癌切除55例を対象とした。CT検査で新規病変を認めた場合は、DWIBSとFDG-PET/CTを追加した。
結果:肺癌55例中32例が再発転移を起こした。肺転移が17例、骨転移が7例、肝転移が5例、リンパ節転移が5例、胸膜転移が4例、胸壁転移が2例、脳転移が2例、副腎転移が1例、腎転移が1例であった。再発転移病変の平均apparent diffusion coefficient (ADC)は 0.9 – 1.70 × 10−3 mm2/sであった。DWIBSの多発性再発転移病変の正診率0.98 (54/55) は、 CTの0.94 (52/55)、FDG-PET/CTの0.94 (52/55)に比較し良好な傾向であったが、有意とは言えなかった。
結論:DWIBSは、1回の検査で全身の再発転移性病変を検出ができ、良悪の鑑別が可能である。DWIBSは再発転移病変の正診率に長所があり、より安価である。DWIBSは、今後肺癌切除後の再発転移の検出においてFDG-PET/CTにとって代わりうる。